2012年2月25日・第1回公判
民衆法廷とは何であり、なぜ、何を裁くのか
――本法廷の性格と任務
一 法廷の根拠
1. 本法廷は、2011年12月19日に市民社会が採択した「原子力発電所を問う民衆法廷規程」に基づいて設立された。
規程第1条は「原子力発電所を問う民衆法廷(以下「原発民衆法廷」)は、本規程の定めるところに従い、日本における原発政策の導入、展開、及び現在に至るすべての経過を、日本国憲法、各種の法律及び確立された国際法に基づいて検証し、日本政府、および国際社会に勧告的意見を提出する」として、法廷の設置を定めている。続いて、規程第2条は「原発民衆法廷は、原発政策の導入、展開、及び現在に至るすべての経過に照らして、国家の責任を判断する」とし、第3条は「原発民衆法廷は、本規程の規定に従って、個人及び法人に対して裁判権を持つ」として、法廷の任務を定めている。本法廷は規程及び法廷呼びかけに示された思想に基づいて、原発を根底的にとらえ返し、日本における原発政策を解明し、原発および原発事故に関連する国家、地方自治体、個人、法人の責任を明らかにすることを目的とする。
2.本法廷の基本的性格として何よりも強調しなければならないのは、民衆法廷としては当然のことであるが、福島第一原発事故によって被災した福島県をはじめとする被害者の視点である。日本政府や東京電力が置き去りにして顧みようとしない多様な被害者の声に耳を傾けることを基本に据えることなしに民衆法廷は存立しえない。被害者の視点で物を考えるとはどのような営みを指すのかを、権威や権力の高みからではなく、人類史上初の原発水素爆発の映像に震撼し、恐怖を味わった世界の民衆とともに考え、ここから来るべき思想を紡ぎだしていくことが本法廷に課された任務である。同様に、世界各地のウラン採掘現場で、核兵器製造工場と核実験場で、原発立地で、そして使用済核燃料貯蔵地各地で、人間の尊厳を賭けて闘っている人々の声に耳を傾け、思いを共有することが、本法廷の出発点でなければならない。
3.福島第一原発事故の被害者という場合、どの観点で見るかによって被害者の範囲も大きく異なる。事故後に原発周辺地域から避難を余儀なくされた人々ばかりではなく、水素爆発の映像に驚愕し慄然とさせられたすべての人々が深刻な精神的被害を受けたことも言うまでもない。民衆法廷は、さまざまの意味での被害をとらえ返し、被害者の声に耳を傾けつつ、その位置と意味を見定めていく必要がある。
二 民衆法廷の継承
4.民衆法廷には長い歴史があり、本法廷は先行する民衆法廷に学び、これを継承するものである。
5.ヴェトナム戦争が激しく戦われていた1967年5月2日から10日、ストックホルム(スウェーデン)で、ヴェトナムにおけるアメリカの戦争犯罪を裁く「国際戦争犯罪法廷」――通称「ラッセル法廷」――が開かれた。提唱した哲学者バートランド・ラッセルを名誉裁判長、ジャン・ポール・サルトルを執行裁判長とし、アイザック・ドイッチャー(英)、ウラジミール・デディエ(ユーゴ)、シモーヌ・ド・ボーボワール(仏)、レリオ・バッソ(伊)、デビッド・デリンジャー(米)、森川金寿(弁護士)などを法廷メンバーとした。