原発政策を問う民衆法廷規定


原子力発電所を問う民衆法廷規程(素案)
2011年12月28日

2011年3月11日に発生した「東日本大震災」の結果として生じた福島第一原子力発電所事故は、長年にわたって日本政府が”国策”と称してきた原発政策の破綻がもっとも深刻重大な結果として現象した人災ではないかとの疑念を呼び起こしている。人為的コントロールの限界を超え、安全性の確保が困難な原発を、多くの科学者の批判に耳を閉ざし、危険であるとの情報を隠蔽し、膨大な税金や広告費を使って安全情報のみを繰り返し宣伝し、日本社会に押付けてきたために、レベル7の人災を招いたのではないだろうか。
福島第一原発事故後、「原発犯罪」という言葉が用いられるようになってきた。国際法にも国内法にも明文の根拠のない概念であり、その内容が何を指すのかも不明確な概念であるが、多くの民衆にとって「原発犯罪」という言葉はそれなりに理解しやすいものとして受け止められているように見える。原発政策における情報隠蔽、情報操作、地域社会の分断・破壊、批判的な科学者への嫌がらせ、「御用学者」の重用、「御用メディア」との癒着、腐敗した利権構造、下請け労働者への被曝の強要、コストを理由にした安全措置の回避・・・次々と指摘されてきたこれらがからまりあって、原発推進政策を可能としてきたのではないだろうか。これは現代日本の縮図ではないだろうか。
今回の福島第一原発事故に際しても、安全性よりも高価な原子炉を守ることにとらわれたために海水注入を遅延させたのではないかとの疑念、被災地の避難計画の遅延や杜撰さ、被曝基準の恣意的変更をはじめとして、果して数十万もの人々の命と暮らしを顧みての対応であろうかと疑われる経過は、まさに犯罪的ではなかっただろうかと、多くの市民が考えるのも理由があるのではないだろうか。その意味で、法的概念ではないが、あえて原発犯罪という言葉を掲げる意味があると考えられる。事実解明を進め、人々の命と暮しを守る観点から事実を検証し、民衆法廷の実践を通じてこの概念に内実を与えていくことが必要ではないだろうか。
 問われていることは、利潤と経済効率ばかりを優先する社会をこのまま維持していくべきなのか、それとも、より人間らしい暮らしを実現していくのかである。この分岐点の先にさらにさまざまの選択肢をめぐる論争が必要とされている。そうした幅広い討論を積み重ねる場の一つとして民衆法廷が果たす役割には大きなものがあると考えられる。

第1条   民衆法廷の任務
原子力発電所を問う民衆法廷(以下「原発民衆法廷」)は、本規程の定めるところに従い、日本における原発政策の導入、展開、及び現在に至るすべての経過を、日本国憲法、各種の法律及び確立された国際法に基づいて検証し、日本政府、および国際社会に勧告的意見を提出する。

第2条   国家の責任
原発民衆法廷は、原発政策の導入、展開、及び現在に至るすべての経過に照らして、国家の責任を判断する。

第3条 個人及び法人に対する裁判権
  1. 原発民衆法廷は、本規程の規定に従って、個人及び法人に対して裁判権を持つ。
  2. 個人は、公的又は私的な組織における地位についていたことを理由に責任を免かれることはできない。


第4条 原発民衆法廷の構成
 原発民衆法廷は、以下の組織によって構成される。
  • (a) 裁判部
  • (b) 代理人団
  • (c) 事務局

第5条 裁判部の構成

 裁判部は、5名の独立した判事から構成される。

第6条 判事の適性
 判事は、日本国憲法、国際人権法を含む国際法分野、または文明論、現代思想、科学論などの幅広い知見、さらには地方自治、町づくりなどに関連する知識と経験を有する者から選任される。

第7条 申立て及び申立人
日本社会構成員(日本国籍保有者に限らず、日本在住者を含む)は、原発民衆法廷に、原発政策に関する申立てを行うことができる。申立ては文書を通じて事務局に行う。

第8条 代理人
  1. 代理人は、申立人を代理して、前条に定める申立てを集約・総括・整理する。
  2. 代理人は、原発民衆法廷の公判に出席し、主張・立証を行う。


第9条 事務局
  1. 事務局は、民衆法廷の運営および事務処理に関し責任を持つ。
  2. 事務局は、事務局長および必要とされる適性を有するその他の事務員によって構成される。


第10条 公判
裁判部は巡回法廷を行うこととし、必要に応じて各地で公判を開催する。
第11条 アミカス・キュリエ
 裁判部は、事件の適切な決定のために必要であると考える場合、関連する専門家を法廷に召喚し、裁判部によって指定された論点について陳述させることができる。

第12条 決定
裁判部は、申立人及び代理人が提出した証拠、及び自ら収集した証拠を吟味して、必要に応じて随時、決定を言い渡す。
第13条 判決
  1. 裁判部は、最終公判において、日本政府、日本社会に対して勧告的意見を言い渡す。
  2. 裁判部は、関連する諸個人に対して、その法的責任を明示するなど勧告的意見を言い渡す。

第14条 原発民衆法廷の経費
 原発民衆法廷の経費は、非政府組織が負担する。

第15条 使用言語
 原発民衆法廷における使用言語は、日本語とする。日本語を解しない証人には通訳を付す。